【東日本大震災からの復興】
東日本大震災が発生した2011年、まだ6歳だった生徒たちは、
初めて知る内容も多かった様子で、活発に意見交換しました。
【原子力発電所の廃炉に向けた取り組み】
由良統括官は、地震に加え津波が襲った地域のうちでも、福島は原発事故のために現地にすぐ入って捜索や復興に取り組むことができなかった経緯と、事故処理として取り組む廃炉の現状を説明。「原発事故の処理は水との闘い。水を使って冷やし続けなければならず、その水をどう処理するかが課題」と、ALPS処理水の海洋放出の問題にふれました。処理水を入れたタンクは敷地いっぱいになっており「復興を進めるため、海洋放出によって何とか事故処理を進めなければならない」としつつ、海洋放出に対しての受け止めには差があることも説明しました。
生徒からの「処理水の放出はどんな影響があるのか」との問いには「取り除くべき放射性物質は60種類ほどで、多核種除去設備（ALPS）によってトリチウムという物質以外は基準をクリアすることになる。トリチウムは水素の一種であり水から取り除けず、希釈した上で放出する方法を取ることにした。だが、例えば一杯のみそ汁を飲むときと同じで、薄めても濃いままでも摂る塩分は同じじゃないかと言われることもあり、説明に苦労している。」と、率直に語りました。国が適正に処理されているALPS処理水を放出してこなかった理由についての質問には「原子力に依存しない方がいいという見解から、処理水を流すことそのものに反対する人もいる。地元でも説明を続けているが、色々な思いがあると感じる。全国のアンケートでは『放出していい』が4割、『地元が嫌がっているならもう少し考えた方がいい』が4割、残り2割は『難しい問題で答えが出せない』という状況」と、地元を含め賛否が分かれる状況に言及しました。
【風評影響について】
また、ALPS処理水放出と切り離せない問題として風評被害についても話しました。福島の農水産物はしっかり検査されており「全く問題ない状態。地元の方もおいしく召し上がっている」。食べたくないという人は一部であっても、流通業者や生産者にとっては「もっと多くの人がそう思っているのでは」という不安につながり、それが市場に出回る量や価格にも影響を与えてしまうとの見解を示しました。また、海外でも東日本の生産物の輸入規制をしている国があることを説明しました。
【風評の影響を払拭し、福島の復興を進めるには】
由良統括官はまた、地域活性化のため移住を促進していること、太陽光など原発以外のエネルギーの活用や、水素の一大供給地になるなどの目標を掲げた「イノベーション・コースト構想」を紹介しました。
その後、「自分たちができること」「国ができること」などをグループで考えたワークショップでは「正しい情報を得て広める」「この授業を多くの学校で行う」「Youtuberやスポーツ選手に発信してもらう」「処理水を飲んで安全性をPRする」などさまざまな意見が出ました。由良統括官は「処理水をそのまま飲むのはルール上難しいので、福島の皆さんも推奨してくれたアイデアで、薄めた処理水でヒラメを飼うことになった」と、新たな試みについて話しました。
