「いまの魚屋は、これまでのやり方を変えていかなきゃいけない時期にいると思う。だけど、100年続けてきた伝統もある。“変わらない”ことも大事にしながら、どう変えていくかを考えることが私の役目です」
そう話すのは、創業100周年を迎える福島県いわき市の「株式会社おのざき」の四代目・小野崎雄一さん(27)です。東日本大震災と原子力発電所事故で大きな打撃を受けた福島の水産業を守るために奔走してきた父の跡を継ぎ、新たな挑戦を始めています。
若くして生業を守りたいと決意した四代目の思いを、女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーで、地元いわき市出身の諸橋沙夏さんがインタビューしました。
「おのざき」が経営する店には、復興の現状や風評払しょくの取り組みなどを伝えるため多くのメディアの取材が入ります。四代目の雄一さんは、対応を一手に引き受け、「福島の人にこそ、地元の素晴らしさに気づいてほしい」と故郷への思いを訴えてきました。
学生時代は東京への憧れが強かったといいます。 大学進学を機に上京した雄一さんは当面、地元には戻らないつもりでした。なんとなく「長男の自分が継がなければ」と思いつつ、魚屋の仕事は魅力的には映らず、地元で暮らすことへ不自由さを感じていたと言います。しかし、故郷を離れ、外の世界から故郷を俯瞰すると、住んでいた時には分からなかった魅力を再発見できたのです。
「海も山も川もあって、首都圏や仙台地区へのアクセスも良い。何より魚が美味しい。いわきは本当に恵まれた場所です」
将来はいわきに戻って店舗経営をしたいと考えた雄一さんは、卒業後に大手の流通企業に就職しました。雄一さんは当時、台湾スイーツや古着を販売するショップを起業したいという思いを持っていました。会社を辞めて個人開業するための準備を進めていたとき、三代目で父の幸雄さんが思いを打ち明けました。
「(うちの会社を)手伝ってほしい」
福島は復興が進んで地元の魚屋にも活気が戻りつつある一方で、消費量の減少や不漁によって先行きが見えない状況に立たされていました。
幸雄さんは当時、「外部環境の変化が目まぐるしい。魚屋も変わっていかなければならないし、今のままじゃいけないというのは分かっている。けど、なかなか変われないんだ」という危機感を持っていたのです。
会社の状況を知った雄一さんは、「このままではまずい。この会社も、この業界も、福島も」と感じ、四代目として継ぐ決断をしました。
「おのざきは県内最大級の魚を扱う店なので、社会的使命が大きいと感じました。次の世代に繋げるために人生を捧げようと思いました」と振り返ります。
雄一さんが家業に加わり、創業100年を迎える老舗の新たな挑戦が始まります。その一つが、自らが手掛けた新商品『金曜日の煮凝(にこご)り』の開発です。煮凝りは、煮た魚を煮汁と一緒にゼリー状に冷やして固めたものです。白ワインとの相性が良く、洋風グルメとして人気も高まりつつあります。
雄一さんは、“常磐もの”を組み合わせ、パッケージもこれまでの魚屋のイメージとは全く違う、「映える」デザインで商品化しました。ラインアップはヒラメ、アナゴ、アンコウの3種類。魚の旨味をジュレ状に閉じ込めた逸品で、「マヨネーズと和えてパスタに絡めると、とてもおいしい」とのこと。このほかにも常磐もののヒラメを使用した離乳食など、様々な新商品の開発を続けています。
そのうえで四代目の雄一さんが意識していることは、「半歩先を行く」ことです。
「突飛なものを作っても売れない。既存のものを切り口を少し変えて発信することが大事だと思います。値段が高くても選ばれる魚屋にならなければいけない。美味しさは大前提で、背景のストーリーや付加価値が必要です」と話してくれました。そして、現在考えている新商品のアイデアを聞いてみると…。
「あまり食べられない魚に注目しています。カナガシラを使ったココナッツカレーを量産中で、アカエイの唐揚げも商品化を目指しています。これまで捨てられていた魚やアラを商品化できた企業が、これから先、間違いなく生き残ると感じています」
いわき市を代表する魚となったメヒカリも、かつては捨てられる魚でした。消費者にまだ知られていない常磐ものの美味しさや調理方法を知ってもらい、福島の水産業を盛り上げたいという意思を持っています。
若者らしい取り組みもあります。雄一さんはSNSで精力的に情報発信を行っており、X(旧Twitter)に投稿したアカエイの商品告知は10万PVを超える反響が寄せられました。
「発信しないことは存在しないのと同然です」と話す雄一さん。父の幸雄さんが震災後に必死になって県外で常磐ものの魅力を伝えてきた思いを受け継ぎ、新しいツールを駆使して伝えることにも努力を惜しみません。
その原動力となっているのは「常磐ものへの自信」です。
「常磐ものは福島が誇る個性です。そこが揺らぐと定住者は増えないと思う。守り続けることは社会的に大きな意義があると思うんです」と話す眼差しは、家業だけではなく、福島の将来も見据えているようでした。
これからの100年に向け、老舗をどう継ぐのでしょうか。雄一さんはこう語りました。
「福島県内で常磐モノのおいしさや魅力を発信して、県民に誇りを持ってもらえるような街づくりをしたいです。福島といえば魚がうまい、福島の魚といえば『おのざき』と言われる、街のシンボルのような存在になりたい。そのためには信頼を積み重ねるしかありません」
PRESENT
冬が旬の福島県産あんこうを使用し、肝入りの濃厚味噌スープで仕上げた贅沢な一品です。コシヒカリを使用したモチモチの米粉麺は〆にぴったり。最後まで美味しくいただけます。
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