Hand in Handreport.64

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2023.10.27

村の夢を乗せて、上品な甘さの「いいたて雪っ娘かぼちゃ」を広めたい

かぼちゃ畑でいいたて雪っ娘かぼちゃをアピールする諸橋沙夏さんと渡邊とみ子さん

「いいたて雪っ娘かぼちゃ」は、白くて艶やかな薄皮と上品な甘さ、そして滑らかな食感が特徴の福島県飯舘村が誇る特産品です。東日本大震災に伴う原子力発電事故の後、飯舘村は一時全村避難を余儀なくされ、村内で栽培することができなくなりました。しかし、いいたて雪っ娘かぼちゃの農家である渡邊とみ子さんの「飯舘村の産品を作りたい」という強い思いから、震災後は福島市で栽培が続けられ、種が大切に守られてきました。

2017年3月31日に飯舘村の一部で避難指示が解除され、6年ぶりに村内での栽培が再開した雪っ娘かぼちゃ。その道のりは一体どんなものだったのでしょうか。そして、渡邊さんが思い描く未来とは…?いわき市出身で、女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーである諸橋沙夏さんがお話を聞きました。

かぼちゃ畑の様子

渡邊さんは、飯舘村と福島市で計約1.7ヘクタールほどのかぼちゃ畑を所有しています。この日(8月下旬)は、飯舘村の畑に訪問させていただきました。腰くらいの高さの草に覆われた畑の地面に、かぼちゃたちがゴロゴロと転がっています。今年は猛暑の影響で、例年より2週間ほど早く収穫時期がやってきたといいます。

畑は銀色の電気柵で囲まれていて、取材をしていると10分に一度くらいの頻度で「バンッ」という空砲が鳴り響きます。渡邊さんによると、猪や猿、ハクビシンやカモシカといった動物からかぼちゃを守るために設置しているそうです。震災後に人の営みがなかった飯舘村では、動物による被害が多く発生するようになりました。渡邊さんは「彼らは本当に賢い。明日収穫しようかなと思っていると先に盗られたりする。動物と共存していくのが大変です」と話しながら、畑を見つめます。

取材する諸橋沙夏さんと取材を受ける渡邊とみ子さん

避難指示が解除され、飯舘村での営農に向けて試験栽培を始めた2017年当初、畑には渡邊さんの背丈より大きなヨモギが生い茂っていました。除染のため草を刈っても、次に来た時にはまたすぐに葉が生い茂ってしまっていて、畑の姿に戻すことがとても大変だったそうです。

その後、本格的に実証栽培がはじまりました。放射性物質の量について、渡邊さんは国の1kgあたり500ベクレルという基準より厳しい20ベクレルを自主基準として、土や収穫物を検査しました。

「正直、生産者としては放射線のことにはあまり触れてほしくない。でも、やっぱり消費者の方が一番心配する部分だから、しっかりした数値でお客様に提供しようと考えてきた。販売する際に『飯舘の名前を出すのか』と周囲に言われたこともあったし、名前を商標登録する時に、別の名前がいいんじゃないかという迷いもあった。でも、飯舘から発信するんだという強い思いがあったので、あえて名前を強調することにした」と渡邊さんは話します。

村の今、そして自身の取り組みや震災後の体験を発信する「語り部」としても活動する渡邊とみ子さん

飯舘村での栽培を軌道に乗せようと奮闘していた2018年。二人三脚でかぼちゃを育ててきた最愛の夫・福男さんが息を引き取りました。しかし渡邊さんは、生産をあきらめず、福男さんと共に愛したいいたて雪っ娘かぼちゃの魅力を伝える活動を続けてきました。

「夫とは、何をするにも一緒で、多くの夢を語ってきました。私は飯舘村が故郷ではないけれど、夫がいたから見知らぬ土地に嫁いできても頑張ることができた。今では大切な故郷になった」

渡邊さんは村の今、そして自身の取り組みや震災後の体験を発信する「語り部」としても活動しています。
「道の駅に商品を出すことは簡単にできるかもしれない。でも私は飯舘村やいいたて雪っ娘かぼちゃのことを広めるために、自分で積極的に広報活動をしている。色々な場所で私が話す姿を見た人から『それじゃ自分も頑張ろうという気持ちになった』『元気をもらった』と言われると、私の一つの役割として良かったなと思うんだ」と、渡邊さんは微笑みます。

そして渡邊さんの話を聞き、県内外の人からも「いいたて雪っ娘かぼちゃを育てたい」という声が寄せられるようになりました。その輪は福島県内にとどまらずどんどん広がっていき、現在、北は北海道、南は福岡や大分で栽培されています。種を売るだけでなく、どう育てれば良いかなど、実際に生産者の畑に出向いて質問に答えることもあるそうです。

いいたて雪っ娘かぼちゃを収穫する諸橋沙夏さんと渡邊とみ子さん

福男さんと二人三脚で紡ぎ、広めてきた飯館の新たな特産品。今回の取材では諸橋さんもそんなかぼちゃの収穫を体験させていただきました。収穫期の茎は太く、かぼちゃを切り離すのも一苦労です。思いっきりハサミを握ると、「パチン!」という大きな音がして、何とか収穫することができました。初めてかぼちゃの収穫を体験した諸橋さんは、「みずみずしい! ずっしりと重いですね!」と、目を輝かせていました。福男さんや飯舘村への愛情がたくさん詰まっていることを感じさせてくれました。

渡邊さんは、ブランドを守るために厳しい基準を設けています。出荷する際に水に沈め、中身が詰まっているかどうかを確認します。糖度も一つひとつ丁寧に測り、基準に達しないものは出さないと決めています。

「かぼちゃは捨てるところがない。切屑は蒸しパンのトッピングにできる。雄花や雌花、かぼちゃの赤ちゃんも全部食べることができる。わたもマリネにしたり、味噌汁に入れたりするとおいしい」。かぼちゃを見つめるその眼差しは、とても優しく、まるで我が子を見ているようです。

かぼちゃの切屑の写真

最後に、渡邊さんに今後の目標を聞いてみました。

「知名度もどんどん上がってきたので、このまま村の特産品として全国に広めていきたい。そして、原発事故があっても諦めなければなんだってできるんだということを皆さんに知ってもらいたい。いずれは農家民宿もやってみたい。収穫体験や、食文化を伝えて泊まることができる場所をつくることが夢です」。農家民宿は、亡き夫・福男さんとずっと前から計画していた夢でもあります。

大切に育てられてきたいいたて雪っ娘かぼちゃの写真

いくつもの困難を乗り越えて、大切に育てられてきたいいたて雪っ娘かぼちゃ。「育てていると自然が相手だから毎年違う苦労がある。だけどせっかくここまできたのだから、いつかは後継者ができたらいいな」。広いかぼちゃ畑を眺めながら、そう話しました。

PRESENT

撮影:坂本貴秀
2023年10月27日(金)放送分のプレゼントは、「までい工房美彩恋人」の大人気商品、「かぼちゃ畑の完熟ジェラート」(6個入り)です。3名様にプレゼントします。
なめらかな食感と濃厚な甘さが特徴のかぼちゃ「いいたて雪っ娘」をふんだんに使用。いわき市内で洋菓子店を営むイタリア人ジェラート職人と作った高級ジェラートです。口いっぱいに広がる濃厚なかぼちゃの風味や甘さを、お楽しみください。

このページのトップにあるダイジェスト動画の中で、レポーターの諸橋沙夏さんが取材の感想として語った言葉が応募キーワードです。動画を視聴して、番組ホームページのメールフォームからご応募ください。

本商品は、TOKYO FMで放送中の「Hand in Hand」内で応募プレゼントとして紹介されているものです。
本サイトからの応募はできませんので、希望される方はこちらよりご応募ください。
なお、応募締切は 2023年11月3日(金)となります。

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時10分ごろに放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。

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