Hand in Handreport.62

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2023.09.29

途絶えた松川浦名物・青のりの佃煮…孫が10年ぶりに味をつないだ

左からタレントのユージさん、菊地基文さん、久田裕一郎さんの集合写真

東北地方の太平洋岸では最大規模の干潟(ひがた)が広がる相馬市の松川浦。多くのミネラル分を含む川から流れ込む水と海水が混ざり合った干潟は、貝やカニ、エビなど多種多様な生物を育む貴重な環境で、古くからアサリやアオサノリの養殖が盛んに行われてきました。

その松川浦地区で、観光客や地元の人たちにこよなく愛されてきた味があります。「民宿おびすや」の一品料理として生まれた「青のりの佃煮」です。松川浦の名産であるアオサノリを使った加工食品で、宿泊客に振る舞われるだけでなく、ご飯のお供として多くの人が買い求める人気ぶりでした。しかし、「民宿おびすや」は東日本大震災による津波で建物が全壊し、廃業に追い込まれてしまいます。名物の「青のりの佃煮」も食べることができない“幻の味”になってしまいました。

その後、復興が進み松川浦でのアオサノリの生産が再開。震災から10年という時を経て、失われた味があるきっかけから復活することになります。さらに、復活した直後から売り切れが相次ぐほどの話題を呼びます。そこにはどんな経緯があったのでしょうか。生産者の思いを含めてタレントのユージさんが取材しました。

民宿おびすやの外観写真

話を伺ったのは久田裕一郎さん(34)で、松川浦地区で60年続く「民宿おびすや」の3代目です。地元の名物となった「青のりの佃煮」を生み出したのは民宿の女将を務めていた裕一郎さんの祖母・芳子さんでした。とにかく優しくおもてなしが大好きな人で、毎日、宿泊客たちに松川浦産の新鮮な海の幸を提供していました。

民宿ではご飯のお供として小鉢にちょこんとのせて提供していた佃煮でしたが、宿泊客たちから「家庭でもこの味を食べたい」という要望が多く寄せられ、お土産用として販売を始めました。すると評判はすぐに広まり、民宿だけではなく地元のスーパーなどでも販売されるほどの人気商品となりました。

しかし、その味は東日本大震災とともに失われてしまいます。海のそばにあった「民宿おびすや」の建物も佃煮の原料となるアオサノリの養殖場も津波で流されてしまったのです。養殖に使う道具や船も被害を受け、久田さん一家は民宿を廃業せざるを得ませんでした。

「海の仕事はもう無理だ」

久田さん一家は、海とは関係のない仕事を始めます。裕一郎さんは消防士となり、父親の則雄さんは原子力発電所事故の廃棄物を処理する仕事に就くことになりました。その後、松川浦の護岸工事などが進み、干潟の環境はかつての姿を少しずつ取り戻し始めます。そうした中、アオサノリの試験操業が始まった2018年に、久田裕一郎さんはひょんなことから出会った地元漁師の菊地基文さんに、祖母が民宿「おびすや」を経営していたことを話しました。

おびすやの海苔の佃煮について熱い想いを語る菊地基文さんの写真

「あの味がまた食べたい。作ってよ」

もともとおびすやの海苔の佃煮の大ファンだった菊地さんは、熱い思いでそう語ったといいます。菊地さんと同じ思いを持った地元の人たちからも復活を望む声が久田さん一家に届き、裕一郎さんは父親らとともに復活に取り組みました。佃煮の生みの親である祖母は当時すでに他界していましたが、生前に教わっていたレシピを元に試行錯誤を繰り返し“幻の味”の再現に挑戦し続けました。そして、2022年、ついに復活することになります。

裕一郎さんに熱い思いを語った地元漁師の菊地さんは、久田さん家族が完成させた「青のりの佃煮」を食べて思わず口にします。
「これだ!これ、これが食べたかったんだ!」
それは復活を望む多くの人が感じたことでした。久田さん家族は失われていた味を完全再現することに成功したのです。

久田さん一家が作る佃煮は一般的な海苔の佃煮とは違い、箸ですくうとアオサノリの葉の一枚一枚がピンとたち、まるで生で食べているような食感が特徴です。口の中に入れると海の香りがしっかりと感じられます。

「一般に海苔の佃煮というと、ちょっとご飯にのせてその塩気でご飯がガッといけるようなイメージですけど、うちのは醤油ベースの甘くてすごく優しい味付けなので、ご飯の上にたんまりとのせて食べるのが美味しいんです」と久田さんは語ります。

復活したという話題は地元の外にもすぐに広まりました。噂を聞きつけたかつての宿泊客や観光客たちは「おびすやの佃煮はないですか?」と市役所や浜の駅松川浦に相次いで問い合わせ、相馬市を訪れてスーパーで探す人もいたそうです。

「そんなに望んでくれている人がいるのなら」と、周囲の声にも後押しされ久田さん一家はもう一度海と向き合うことを決意しました。今度は民宿ではなく食品加工会社を設立し、名物の佃煮とともに廃業した「おびすや」の屋号も復活させることになったのです。そして、アオサノリの養殖も再開しました。

おびすやのピリカラ青のり佃煮とおびすやの青のり佃煮の商品写真

商品には屋号を付け「おびすやのピリカラ青のり佃煮」と「おびすやの青のり佃煮」と名付けました。販売が開始されると「懐かしいあの味が復活した」という評判がまたたく間に広まり、松川浦を代表する人気商品となりました。その人気ぶりから地元の飲食店では、佃煮を使ったお寿司や卵焼き、ピザなどの創作料理が数多く誕生しているといいます。

「青のりの佃煮」は全て手作りのため1日に生産できるのは約150個と限られています。現在でも製造した分が週末には完売してしまうそうです。久田さんは「おびすやの佃煮は震災から10年経って復活しました。だから今度は10年経ってもおいしいと言ってもらえるような商品を作り続けたい」と話します。

久田さんは、地元を盛り上げようと情報誌『そうま食べる通信』の発行を始めた漁師の菊地さんとともに新たな挑戦を始めます。若きシェフの登竜門「CHEF-1グランプリ」の初代チャンピオンで、テレビ番組にも出演する人気料理人の下國伸シェフとタッグを組み、相馬の新名物を生み出そうというプロジェクトです。

松川浦コロットというチーズリゾットコロッケの写真

佃煮の味や独特の食感に惚れ込んだ下國伸シェフが作り上げたのは『松川浦コロット』という一品です。一口でパクリと食べられるくらいのサイズのチーズリゾットコロッケで、小さな見た目からは想像もできないような様々な食材が詰まっています。

具はコロッケで一般的に使われるジャガイモではなく、松川浦漁港で水揚げされたカナガシラという魚やアサリなどが使われています。栄養価が高く味も良いカナガシラですが、頭が大きくて食べる部分が少ないことから市場で安く取引きされるため、水揚げされても流通しない「未利用魚」です。「ウチの佃煮はいろんな食べ方ができるけれど、やっぱりご飯と一緒に食べるのが一番美味しい」との久田さんの思いから、コロッケとリゾットを融合させてご飯に合う食材を使った味付けにしました。

松川浦コロットの具は松川浦漁港で水揚げされたカナガシラという魚やアサリなどが使われています

「相馬の新名物をつくるために、他にもまだまだ考えているプランがたくさんあります。松川浦のおいしい食材を前面に出せる商品をもっと作って行きたいです」と話す久田さん。今回タッグを組んだ下國シェフと次なるレシピの開発に取り組んでいるそうです。
10年の時を経て復活を遂げた「おびすや」の味。これからも”新しい感動”を生み出し続けていきます。

おびすやの海苔の佃煮は、オンラインショップでも購入することができます。
https://www.obisuya.com/

PRESENT

「おびすや3種セット」の写真※画像はイメージです。レタスやレモン、チーズはセットに入っておりません。
2023年9月29日(金)放送分のプレゼントは、「おびすやのピリカラ青のり佃煮」「おびすやの青のり佃煮」「おびすやのガニ味噌」の各ミニサイズがセットになった「おびすや3種セット」と、「おびすやの松川浦コロット」のセットです。3名様にプレゼントします。

海苔1枚1枚の存在感を感じられる風味豊かな佃煮と、それを使ったユージさんも大絶賛のコロット。ぜひご賞味ください。
このページトップの動画をご視聴いただき、レポーターのユージさんが取材をして思い浮かんだというキーワードをフォームにご記入ください。

本商品は、TOKYO FMで放送中の「Hand in Hand」内で応募プレゼントとして紹介されているものです。
本サイトからの応募はできませんので、希望される方はこちらよりご応募ください。
なお、応募締切は 2023年10月6日(金)となります。

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時10分ごろに放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。

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