
福島県大熊町の「特定復興再生拠点区域」で初めてとなる飲食店「食事処 池田屋」が2024年5月に誕生しました。復興の道半ばで温かいご飯を食べられる場所が少ない大熊町にとって待望の場所です。その飲食店を開業した女性の思いをいわき市出身の女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバー・諸橋沙夏さんが話を聞きました。
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大熊町に飲食店を開業した理由
大熊町の玄関口となるJR大野駅から車で5分ほどの場所にある「食事処 池田屋」。店主の池田孝代さん(62)が、長女の倫千代さん(32)、長男の謙太さん(27)と共に店を切り盛りし、夜は真っ暗になるこの地で唯一の明かりを灯しています。

池田さんは大熊町の隣にある浪江町出身。結婚を機に故郷を離れて神奈川県で暮らしていました。子育てが一段落したときに再び故郷に戻ろうと思いを巡らせていたときに、東日本大震災が発生し、浪江町請戸地区にあった実家は跡形もなく流されてしまいました。さらに、実家があった周辺は災害危険区域となり住むことができなくなってしまったのです。
それでも故郷の豊かさに代わるものはありませんでした。「都会にはない自然と空気のおいしさ。そして、少しでも海の近くにいたい」と、池田さんは何一つ不自由のなかった神奈川県での暮らしを捨て、復興真っ最中の大熊町での生活を選びました。なぜ、故郷の浪江町ではなく大熊町への移住を決断したのか。そこには「ある理由」がありました。

「孫が4歳。とてもやんちゃなんですが都会にいるときは近所迷惑を気にして大声で話すことができなかったんです。それが、ここにいるときは伸び伸びしているし、大きな声で話すようになりました」
池田さん家族が大熊町への移住を決断した理由。それは、長女・倫千代さんの長男・倫也くんの存在でした。
大熊町に開校した「学び舎 ゆめの森」
「大熊町にできた新しい学校に孫を入れさせたかったんです」
大熊町では2023年4月に「町立学び舎ゆめの森認定こども園」が開園しました。震災後およそ12年ぶりに町内で教育活動の再開を果たし、子どもたちの元気な声が戻ってきたのです。教育の拠点として新たに完成した「学び舎ゆめの森」は開放的なデザインが特徴です。0歳から15歳の子どもたちが地域の人たちと協働してともに遊び、学ぶ場所として、多様性に満ちた社会で子どもたちが自分で考え人と協力して生きていく力を育むことを目指しています。現在、幼稚園に入園前の幼児も含めて、幼稚園児、小学生、中学生55人が通っています。(2024年5月時点)
「孫をこの学校に通わせたくて大熊町を選んだんです。最近は『オーマイガー』などと習いたての英語を披露してくれるんです。それに、リスがいっぱいいてドングリや栗を食べられたとか、自然の動物を見て喜んでいるんです。大熊町は無料のズーラシア(神奈川県にある動物園)です」

何ともうれしそうな表情で話す池田さん。神奈川県で暮らしていたときには隣近所を気にする生活でしたが、大声で走り回る孫の姿を見て「大熊町に移住して本当に良かった」と話します。そんな池田さんには、今でも耳に残る孫・倫也くんの言葉があります。
「縁側で話していたら、ばあば…気持ち良いね。空気がおいしいねって。話してくれたんです。そんなこと教えていないのに小さな子どもにも分かるんだなあと思いました」
マクドナルドがない大熊町で「ばあば、ハンバーガー食べたい」など、時々池田さんを困らせることもありますが、「広い空とおいしい空気」がある環境がこの上ない贅沢だということを子どもながらに理解しているのかもしれません。孫の倫也くんは大熊町の生活がすっかり気に入ったようだと話します。

病気と闘いながら大熊町で生きる
実は池田さんは現在、がんの治療を受けながら厨房に立っています。移住を決断した理由でもあり心の支えとなっている孫や子どもたちとともに、この町がどんな変化を遂げていくのかを見続けたいと話します。
「週末に家の手入れで帰ってくる人たちが“良かったよ、ここに明かりがついていて”って言ってくれるんです」
町には戻らず避難先で生活を続ける人たちにとっても、故郷に明かりが灯ることを喜んでいます。「食事処 池田屋」を経営することで、この町に帰還を目指す人たちにとって一息つける場所を提供すること。そして、復興をさらに前に進めようとしている人たちを“食”で支えることを続けたいとも話します。
津波によって思い出の品々は全て流されてしまいましたが、大熊町で新たな一歩を踏み出した池田さん。
背中を押してくれる人がいる限り、池田さんは歩みを止めることはありません。

PRESENT

ジャム、セミドライフルーツ、飲むこんにゃくゼリーの詰め合わせセット。すべて福島県大熊町産の、甘酸っぱく、みずみずしいいちごを贅沢に使用しています。「復興のシンボル」として、いちごの加工品は県内の各地域の企業・団体とのコラボで誕生しており、大熊町以外の地域にも還元ができる仕組みになっています。
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本商品は、TOKYO FMで放送中の「Hand in Hand」内で応募プレゼントとして紹介されているものです。
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