Hand in Handレポート「『福島』を学びの場に~福島から、大阪の高校生たちへ

Hand in Handレポート『福島』を学びの場に〜福島から、大阪の高校生たちへ〜

全国各地の災害被災地の現状と、復興へ力を尽くす人たちの姿を通じて、防災減災の教訓を伝えていく、さらにその地域の魅力を伝え、復興の応援につなげていく復興応援プログラム「Hand in Hand」。

今回は、「『福島』を学びの場に~福島から、大阪の高校生たちへ」と題し、原発事故の被災地・福島から、教育旅行で福島を訪問する県外の学生へ発信を続ける関係者の思いと、遠い地から来た若い世代がどう受け止めたかをお伝えします。

番組では、大阪府立大手前高校の学生たちが、福島市にある「環境再生プラザ」という広報施設を訪問した際の様子を取材し、プラザの関係者や、学校の先生・生徒の皆さんにインタビューを行いました。

環境再生プラザ」は、福島駅のすぐ近くにあり、環境再生に関する情報を伝える拠点として、ふくしまの環境回復の歩み、放射線、中間貯蔵などの情報を発信しており、福島県と環境省が運営しています。

東日本大震災後、原発事故の影響もあり、福島県に教育旅行で宿泊する学校の数が減少しましたが、毎年着実に回復しています。具体的には、東日本大震災直後はおよそ2000校だったのが2018年度には、学校数で7047校と震災前の9割にまで回復しています。延べ宿泊者数でも、およそ70万人泊から517,820人泊と、震災前の7割まで回復しています。

福島県教育旅行入込数:教育旅行(修学旅行、林間学校、臨海学校、スポーツ・文化合宿、オリエンテーション等、学校主催で実施した旅行)を目的に福島県内で宿泊した小学校から大学までの学校・団体数及び延べ宿泊者数

出典:福島県観光交流局観光交流課「平成30年度福島県教育旅行入込調査報告書」

今回は、大阪府立大手前高校の学生たちが、福島大学が主催する「防災リーダー育成プログラム」の一環として、環境再生プラザを訪れました。学生たちは、プラザでの講義と展示を通じて、ふくしまの再生や放射線の基礎知識などを学びました。

今回、環境再生プラザを訪問した感想を、大阪府立大手前高校の大川香理先生と、江原義哉先生に伺いました。

● 大川香理先生のお話
  • やはり震災だけではなくて、津波と原子力発電所という複合的な災害というものに対して、大阪にも福井県に大飯原発がありますので、そういったものを身近に感じていろいろ考えて、何が危なくて、何が大丈夫なのかというのを自分の頭で考えられるベースを作りたいなという事は思っています。
  • 本校の生徒はやはり進学校ということで、座学の勉強を中心に今までずっと過ごしてこられたので、いろんなタイプの、例えば年代も違う、出身も違う、場所も違うようなお子さんと実地で一緒に学ぶ機会というのがすごく少なかったので、そういったところで共同作業を体験できたということでものすごく成長したと思います。
  • 実際に福島まで来ようと募集をかけた時に、誰も手を挙げる生徒がいないかなという不安の中、いち早くすぐに、「行きたいです」、「やりたいです」と、(生徒が)すごく前向きになっていて、今もちらちらとこれからもこういう勉強したいとか、防災士と言う資格があるとしたらそれをとってみようかな、とか言ってきていて、すごく前向きに勉強以外のところでやってくれているな、嬉しいなと思っています。
  • と同時に、そのためには、やはり知識が必要だというところに立ち戻って、今までのやってきた机の上の勉強が、生きたものになっていくんじゃないかなと思っています。この子たちが作っていく未来というのが本当に楽しみだと思います。
● 江原義哉先生のお話
  • 私は国語科の人間なんですけど、やっぱり国語が1番大事だなと思いました(笑)。というのは安全と安心について、ということで、このプラザで放射線について説明を受けたわけですけども、京都大学の先生が書いた「京大変人講座」と言うふざけた題名の本があって、その中で安心と安全と言うのは全く違うものなんだということがあって、安全と言うのは客観的なデータによって説明されるものだけど、安心は各個人が納得するもの、各個人の心の中で受け入れるか受け入れないかという所で決まるものですよね。
  • いくら安全であっても安心できないものはあるし、逆に言えば津波が10メートルまでしか来ないと思って安心していたら全然安全じゃなかったということもあったということですよね。結局その、データに対してどのような判断をするか、どういう風に納得するか、それで油断を防ぐことにもつながるし、逆に言えば本当に安全なんだけれどもそれをうまく伝えることができないばっかりに、いろいろな情報災害、風評被害を含めたものが起きてしまっているということ。
  • ただ数学とか理科はデータに関する学問になってると思うんですけど、やっぱり国語という、人と人との言葉がつながっていくような勉強というのは絶対に1番大事だなと。頑張らないといけないなと改めて思いました。

続いて、今回環境再生プラザで福島での様々な取り組みを学んだ学生の感想です。

● 参加した学生の感想
  • テレビとかでしか土壌汚染、メディアとかでしか聞いたことがなくて、現実味のあるものじゃなかったんですけれども、さっき土に放射線量を計測する機械を当ててみるみたいなものがあったのを見たときに、本当に現実にそういうことがあり得るのだということが身に染みてわかりました。
  • 今までネットとかでも調べたらいろいろな情報が手に入るんですけど、実際に体験してみるとか、話を聞いたりすることでより自分の心に残るような形で知識を得られたかなと思います。やっぱり一言で放射線といってもすごく漠然とした捉え方しかできなくて、実際どうなんだろうなということを聞かれてしまうと答えられなかったんですけど、こうやって学んだことで、「放射線が怖くないの?」と聞かれても自分の口で自信を持って説明できるようになったというのがすごく良かったなと思います。
  • 今まで放射線量の調査とかニュースとかで見ていたんですけど実際にどういうことを調べていたのかも知らなかったので、そういうことを知ることができて良かったと思います。さっきも除染して戻ってきた土をそこに置いてあったのを見て、ちゃんと対策をすればこういう展示する施設でも、置いても大丈夫なものだということがわかって、少し安心しました。

環境再生プラザの見学を含め、大手前高校の防災リーダー育成プロジェクトの参加報告は、以下のサイトでご覧いただけます。この中では、参加者の一人から以下のような感想が掲載されています。
福島では今、ほとんどの被災地が復旧に向かっています。それでも中々直せないものに、放射線による風評被害があります。
これが食品産業などに大変な被害を与えています。今の福島産の食料品に対するチェックは他県よりも厳しく、安全であるという事実があるにもかかわらず、です。
私たちは放射線、放射能について勉強したのではっきり言えます。安全である、と。こればかりは被災地の人々の働きだけでなく、私たち非被災者たちの勉強という努力が必要です。

会場となった環境再生プラザのスタッフ、佐藤悟さんに、この施設で、学生たち・子どもたちに伝えたいことを伺いました。

● 環境再生プラザ 佐藤悟さんのお話
  • 県外から来られる大人の方もそうですけど、特にやはり学生さん生徒さん方には、やはり福島が原発事故の時にどういうことが起きて、どういう風に来て今があって、これから先どうなっていくのかというところをまず知っていただきたいなと。できればそれを各々、自分たちのおうちに持って帰ってもらって、それを正しく伝えていってもらえたらありがたいなと思っています。
  • 今福島県内の小中学校では、専門家の派遣ですとか、プラザにある展示物を移動して「移動展示」という形でそういった放射線授業のお手伝いをさせていただいております。
  • なかなか県外にそういう専門家派遣をできない代わりに、私どもの環境再生プラザのホームページにいろいろな授業の中で使わせていただいているツールですとか、資料なんかはありますので、そういったところから、こういったことを福島では学んでいるんだなと、自分たちの学校でもこういうことをやりたいなというものがあれば、ぜひ、お気軽にお電話でもメールでもアクセスしていただければ助かります。

環境再生プラザには、様々な方が来館していますが、近年は福島県内の来館者は減少傾向だそうです。一方で、県外、さらに海外の方が来館されるケースは確実に増えている実感があると、佐藤さんは話しています。

今回参加した学生たちは、環境再生プラザでの講義と展示を通じて除染をはじめとする福島での環境再生の歩みを学びました。
学生たちが学んだ、環境再生プラザの展示コーナーの一部を紹介します。

※環境再生プラザ提供資料のご紹介:「調べてなっとく放射線

霧箱で放射線の飛跡を観察

※霧箱:普段は見ることのできない放射線を、霧箱という装置を使って放射線の飛跡を観察することで、私たちの身の回りにある自然放射線の存在を確認することができます。

福島の放射線の現状を知りたい、教材として使いたいという方は環境再生プラザのホームページで資料を無償で提供していますのでぜひアクセスしてみてください。また福島市を訪れた際には環境再生に関する情報を学ぶことが出来る環境再生プラザをぜひ訪れてみてください。

  • 環境再生プラザ
    福島県福島市栄町1-31 1階
    開館時間:10:00~17:00(月曜は定休日、祝日の場合は翌平日。年末年始。)
    また、福島県には、今回紹介した「環境再生プラザ」の他にも、様々な学習施設があります。いずれも入館料は無料です。
  • コミュタン福島(福島県環境創造センター交流棟) ※運営:福島県
    パネル展示のほか、体験型展示、360度全球型シアターの映像等により、放射線や環境問題を身近な視点から理解し、環境の回復と創造への意識を深めるための施設。
    福島県田村郡三春町深作10番2号 田村西部工業団地内
    開館時間:9:00~17:00(月曜日は休館日、祝日の場合は翌平日。年末年始。)
  • リプルンふくしま(特定廃棄物埋立情報館) ※運営:環境省
    放射性物質に汚染されたごみ(特定廃棄物)の埋立処分についてわかりやすく学べる体験型の情報館。埋立処分事業の内容や安全を確保するための取り組み、処分の進捗状況やモニタリング結果などの最新の情報を公開。
    福島県双葉郡富岡町大字上郡山字太田526-7
    開館時間:9:00~17:00(月曜日は休館日、祝日の場合は翌平日。年末年始。)
  • 東京電力廃炉資料館 ※運営:東京電力ホールディングス(株)
    原子力事故の記憶と記録を残すとともに、長期にわたる膨大な廃炉事業の全容を見える化し、その進捗をわかりやすく発信する施設。福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央378
    開館時間:9:30~16:30(毎月第3日曜日は休館日。年末年始。)
  • 東日本大震災・原子力災害伝承館(建設中) ※運営:福島県
    福島県だけが経験した、複合災害の記録と記憶を後世に伝えるとともに、復興に向けて力強く進む福島県の姿や、これまでの国内外からの支援に対する感謝の思いを発信することを目的とした施設。2020年夏を目途に開所予定。
    福島県双葉郡双葉町中野地内

ぜひとも足を運んでみてはいかがでしょうか。

福島県の教育旅行プログラムについては、こちらのページで発信しています。
ふくしま教育旅行

また、福島県では、「ホープツーリズム」と題し、福島の現地や人々との出会いを通じて、震災・原発事故の教訓、復興、逆境を乗り越えるとは何かを考え、自分自身を成長させる学びの旅も推進しています。ご興味のある方は是非ご参加ください。
ホープツーリズム(公益財団法人福島観光物産交流協会)