Hand to Hand レポート 福島県、「知って!食べて!行こう!ママが行く!福島ツアー」

Hand in Handレポート「知って!食べて!行こう!ママが行く!福島ツアー」

全国各地の災害被災地の現状と、復興へ力を尽くす人たちの姿を通じて、防災減災の教訓を伝えていく、さらにその地域の魅力を伝え、復興の応援につなげていく復興応援プログラム「Hand in Hand」。

今回は、福島県外在住のママたちとともにパーソナリティの高橋万里恵さんが参加した、「知って!食べて!行こう!ママが行く!福島ツアー」の模様を、前回に引き続きお届けします。

夜の果樹園ホームページより

浪江町を訪れて災害の被害状況を知った10人のママたちは、その夜に、福島市や郡山市がある中通りへ移動し、福島市の佐藤清一さんが営む「まるせい果樹園」を訪問しました。そこで開催されていたのは、果樹園で行うディナーイベント「夜の果樹園」です。「まるせい果樹園」のリンゴの樹がライトアップされ、「福島ブイヤベース 芋煮風」など地元福島の食材をふんだんに使用した地元シェフの料理が参加者をもてなしました。

「まるせい果樹園」の佐藤さんは、震災後、実際にとれた果物の放射性物質が「基準値以下」であったにもかかわらず、売り上げが回復せずに悔しい思いをしたといいます。
ここでいち早く、世界的機関から「安全」と認定される「GAP認証」を取得され、その結果、震災前を上回る売り上げまで回復しています。そんな佐藤さんからママたちに熱い思いが語られました。

● まるせい果樹園 佐藤 清一さんのお話

私で7代目になります。私が就農するにあたって、お客様の顔が見える仕事がしたいってことで直売所をはじめました。直売所をはじめてから順調に伸びてきてこれは行ける!と思っていたころに震災がありました。震災があってからは前年比1割以下までお客様が落ち込みました。農家もやめようかとみんなで話しました。その時に、「今どん底で、これから先これ以下はないだろう。上見て前見て頑張りましょう」ってことで頑張ることを決意しました。果物の線量の値を計測してもらうと、ほぼ値はでませんでした。これは自信もっていけるだろうということでその線量の表をもって東京や直売所でお話していました。ただお客様は「これ大丈夫だよ」と言っても「大丈夫って言うのが当たり前だろう」と思っていましたので、当時自分で大丈夫、って言うのではなくて、自分の畑を第三者の方に審査していただいてGAP認証を2013年にはじめて認証いただきました。この認証をいただくことによって1年目で先ほど1割まで落ち込んだと話しましたが少しずつ持ち直していき、震災から5年目で震災前と同じ位に。6年目以降震災前を少し超えることができました。7年目も伸びて、8年目もさらに上にいけるようにがんばっています。

震災の時すごく悔しい思いをしました。そこで思ったことは、笑顔ってすごく大事だなと。震災の時は周りの方は笑っていなかったです。そこでさらに笑顔が大事だなと思いまして。目標としては、お客様が食べて笑顔になる、来ていただき楽しかった、また行きたいな。さらにはあの人に会いに行きたいなって思ってもらえるような果樹園を目指してがんばっていきたい。私も福島の代表のつもりでがんばっています。福島に来て、福島よかった、また行きたい、福島が好きだって言っていただけるようにまたがんばっていきたい。

ツアー2日目は、耕作放棄地を開墾しブドウを植え、数十年使われていなかった農業用施設をワイナリーに改装した「ふくしま農家の夢ワイン」、そして「酒はからだによいものである」という信条のもと、安心して飲める酒造りをしている1711年創業の酒蔵「仁井田本家」、二つの生産者を訪れたほか、福島県内全域で行われているお米の「全量全袋検査」を見学しました。


● ふくしま農家の夢ワイン 関 元弘さんのお話

二本松市の東和地区は山間部で、かつては養蚕日本一といわれるほど生糸の生産が盛んな地域でしたが、自由貿易の流れの中で養蚕業は廃れ、養蚕に変わる良い作物もなく、農業をやめていく人がいる中で、私たちはこの土地に移住してきました。移住した当時は、まだ団塊の世代も元気で空いている畑がなかったので、夫婦で放棄された桑畑を地元の人と一緒に重機で開墾していったんです。

農業をし始めて5年、色々動きはじめる、まさにこれからという時に原発事故が起こってしまいました。事故直後は耕作自粛になったんですが、検査をして安全性が確認できたので、有機農業の仲間と野菜を売り始めたんです。初年度は応援するという意味もあってバイヤーさんが熱心に買ってくれるところを探してくれて結構売れ、2年目はもっと伸びました。でも3年目には売れなくなりました。事故後はとりあえず応援で買ってくれていたのですが、やっぱり影響は残っていて、2年の間に別の産地を開発していたんですよね。放射性物質検査の結果などを示しても買い叩かれたり、離れていってしまったんです。悔しかったですね。今は、主に県内の地元スーパーを中心に有機野菜を購入いただいています。

前職では狂牛病BSE対策の担当等させていただいていたので、食の安全については勉強させていただきました。食品のリスクは、カビ、毒、化学物質、残留農薬などあって、放射線もそのうちの一つでしかないのです。放射線は測れますが、食中毒などの原因、微生物は測れないんです。そういう意味では、放射線は管理しやすいリスクですが、安心と安全は違う、頭で考えるものじゃないこともわかっています。でも科学的な真実は変わることがないので、正直に隠すことなく、畑に来ていただければ実際に見ていただきますし、うちの子どもも食べていますよという風に、震災以降も普通の生活をしていることをずっとやめずに伝えています。

なぜワイン造りを始めたかというと、養蚕が廃れ、桑畑が全部荒れてしまっていた東和地区では、特に団塊の世代で心の中でなんとかしたいと思っていた人がたくさんいました。そんな中、今、夢ワインの社長である齋藤さんが「ワインを作りたいんだ!これからの若い人はワインだ!」といきなり言い出して、周りのみんなが「いいね、やろうよ」と賛同したんです。近くで桑畑を開墾して葡萄畑をやっている人たちがいたので、すぐに見学に行って、その日のうちにすぐ葡萄の木も注文して、土地も選んで。それが震災の前の年でした。原発事故後、周囲では新しくはじめることなど見合わせていましたが、ここでは、養蚕で培われた一致団結力で「乗りはじめた船だ、やるべ!」となり、当初600本くらいの葡萄を植えるところからスタートしました。やるからには、自分たちで飲みながらやりたい、全部自分たちでやりたいとなり、葡萄の栽培から加工までやることになりました。すぐに市役所に相談して、ワイン特区に認定してもらいました。勝沼にある東夢さんという、やはり親父たちが一からやっているワイナリーがあって、そこに弟子入りして醸造研修、栽培研修など全部教えてもらい、平成25年に醸造を開始しました。

今ここ「ふくしま農家の夢ワイン」では、親父たちが葡萄を作って、若い人が醸造をしています。親父たち団塊世代は、美味しいワインを飲みたい気持ちもありますが、せがれたち若い世代に振り返ってもらいたいのです。農業なんかダメだと思って会社勤めしている若者たちを見るのが悔しくて、荒れていく山を見て、なんとかしたいという気持ちでやってきたんです。その姿を見て、徐々に参加したという若者が増えてきています。地域が続いていくこと、それが私たち親父の夢なんです。

● 仁井田本家 十八代目 仁井田穏彦さんのお話

創業は1711年。この蔵の十八代目になる仁井田穏彦と申します。杜氏も自分で兼務しています。日本酒は冬に作ると美味しいお酒ができるので、まさに今お酒作りがはじまったところです。今うちのお酒は無農薬のお米しか使っていません。そして、ここ田村町金沢という村の水だけでお酒を醸していますが、この自然酒に到達したのが2011年でした。

自然派のお酒を内外に宣言したその年に原発事故が起きてしまい、大変な痛手を受けました。幸いなことに、この場所は原発から50~60キロ離れています。田んぼも水も、もちろんお酒も考えられる全てのものを検査しましたが、事故由来の放射性物質は出ていませんでした。ただやはり売り上げは2割ぐらい落ちてしまいました。去年の決算期、7年かけてようやく震災前の売り上げに戻りました。

私の前に17人の蔵元さんがいて、それぞれ紆余曲折があって、それぞれの代が天命を全うして300年。ちょうどその300年という節目に一大事をちゃんと凌ぐことが出来たので、これからは良いものを残してあげようと思っています。

今、この村の10分の1の田んぼを自社田として無農薬で耕しています。夢は2025年までに村中の田んぼが自然栽培になっていることなんです。生き物がいて、川がきれいで気持ちのいい村。そういった場所を子どもたちに残してあげたいという想いで酒造りをしています。


続いては、収穫真っただ中の郡山市で、お米の放射性物質検査が行われている「JA福島さくら」の郡山片平基幹倉庫の訪問の様子です。福島県産のお米は、今も全量全袋放射性物質検査が行われています。全量全袋検査は、「基準値を超える米は1袋でも流通させないこと」によって消費者の安心・信頼を得ることを目的として「出荷する米」だけでなく、「自宅で食べるもの」など県内で生産された全ての米に対する放射性セシウムの検査です。
震災前、福島のお米は全国のご家庭の食卓で食べられていましたが、震災後、安全性をしっかり確認しているにも関わらず、いまだに値段は下がったままになってしまっています。
日本では国際的に見てもとても厳しい検査基準が設けられていますが、この6年間で基準値を超えたものはありません。
食品中の放射性物質に関する基準については、復興庁パンフレット「放射線のホント」をご覧ください。
お米の全量全袋検査等の検査結果については、ふくしまの恵み(米の全量全袋検査・産地の自主検査結果)をご覧ください。

お米の全量全袋検査を見たママたちからは、

  • 全量全袋検査を知らなかったし、驚いた。買ってみたいと思うが首都圏のスーパーでは福島のお米が売っていない。小さい事かもしれないけどスーパーに置いてある「お客様の声」に「福島の米って置いていないんですか?」と意見するなどして応援したい。
  • 「全量全袋検査を行っている福島の米が一番安全だ」という言葉が印象的でした。このお米が市場に出ないというところにもどかしさを感じてしまいました。それは風評被害だろうし、私たちの言葉で周りに伝えたい。私が今回のツアーで検査を見て安全性について納得したように、他の方々も知れば納得すると思う。

という感想が聞かれました。

ふくしまの県産品は、「ふくしまプライド便」サイトから、各オンラインストアの特設ページでお買い求めいただけます。

2日間にわたって行われたツアー全体についてママたちは、

  • 生産者さんにお会いして皆さん共通して福島に対する愛が強いなと感じました。皆さん「福島を代表するつもりで頑張っている」と仰っていた。それが共通していてすごいな、と。
  • 勇気と誇りを持ってやっているのがすごい。後世に何かを残せるように皆さん努力しているのがすごいなと思った。
  • 福島の方はまじめで根が良いからこそつらかった部分もあったと思う。新しい事を考えて前向きになっている姿に感動した。

とそれぞれの感想を胸に、最後に三春町で昼食をとり、今回のツアーは終了しました。

ツアーの最後に「Hand in Hand」パーソナリティの高橋万里恵さんは、「以前富岡にお魚を釣りに行ったとき漁師さんも安全と安心は別だと思うと仰っていて。安心というのは人のそれぞれの気持ちや心が決めるものなので押し付ける事は出来ないと仰っていた。ただ安全というのを発信するのは私たちでも出来ますし、SNSだけじゃなく身近な友人に話してみて、それがいつか多分『こんなに身近な大事な友達が言っているのだから』とその友達には安全が伝わるのかなと思う。昨日今日で感じたことを周りの方にも伝えていただけたらなと思います」と参加したママたちに伝えました。今回ツアーに参加したママたちは周囲の友人に話したり、SNSで投稿したりするなどそれぞれ自分たちが出来る情報発信で福島の今を伝えています。