Hand in Handレポート「米どころ福島の願いを込めて。新ブランド米『福<small>、</small>笑い』誕生ものがたり」

全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。

今回は、福島県の郡山市と南相馬市を訪ね、「米どころ福島の願いを込めて。新ブランド米『福笑い』誕生ものがたり」と題してレポートします。

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全国有数のコメどころである福島県では、「日本一の米をつくりたい」という思いで14年もの歳月をかけ、新たな銘柄のお米を開発してきました。その名も、「福笑い」。いよいよ産声を上げる、新しい銘柄のお米をめぐるストーリーを紹介します。

福島県は、全国のお米の食味ランキングで、最高評価「特A」獲得銘柄数が3年連続日本一という美味しいお米の産地です。これは、意外と知られていないことかも知れません。
こんな福島県が満を持して、2021年秋に本格デビューさせるのが、新しい品種の「福笑い」。
2020年の秋には、デビューに先立って、期間と店舗を限定して、先行販売を行うことになっています。

まずは、「福笑い」のことや福島県のコメ作りなどについて、農業に関する技術開発を行い、県の農業の後押しをしている福島県農業総合センター(郡山市)作物園芸部長の佐久間秀明(さくま ひであき)さんに伺いました。

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● 佐久間秀明さんのお話
  • 福島県のコメ作りについて教えてください。

    福島県は、「コシヒカリ」が品種の比率としては一番多いです。「ひとめぼれ」も評価されております。県としては、中通り・浜通り・会津の「コシヒカリ」の3点、あと、この中通り・浜通り・会津の「ひとめぼれ」の3点すべてを特A評価にしようという取り組みをやっておりまして。なかなか、すべて特Aというのはまだ達成できていないんですが。会津の米というのは前から評価は高いんです。やっぱり中通りの米もですね、特Aをとれる水準にありますし。あと、浜通りの「コシヒカリ」も最近連続して特Aをとっていますので、県全体で美味しい米の生産ができるレベルになっております。
    あと、県のオリジナル品種としては、「天のつぶ」が9000ヘクタールまで拡大して生産していただいております。中山間地向けの「里山のつぶ」も、県全体の品種の中ではまだ少ないですが、2.4%という比率になっておりまして、それぞれおいしいという評価をいただいております。
    さらに、今回の「福笑い」。本当に良食味というのを売りにした「福笑い」がデビューしたということで、「本当に、福島県はおいしいお米の産地だ」ということを全国の皆さんに知っていただきたいと思います。
    実際、放射性物質の影響があるとか、生活に何か支障があるとかというのは、震災後の一時期を除いて、まったくもうなくなっているわけですが。それでも、やっぱり福島県は原子力災害があった場所というのは事実なわけです。それを、今まで安全性を担保するということで、米については全量全袋検査を実施していまして、5年間全く基準値超えがなかったということで、今年からほとんどの地域でのモニタリング検査に移行したわけですけれども。特に福島県産だからどうこうというのは、もう市場についても、消費者の方についても、払拭していただいたんじゃないかと思っております。

福島の「コシヒカリ」は、会津だけでなく中通りや浜通りでとれるものも、すべて「特A」評価! また、これまでずっと全量全袋検査をしてきて、最近5年間は一袋も放射線基準値超えはありません!美味しさと安全の両方が保証されているわけですね。

<米を含む食品中の放射性物質の検査結果はこちら>

<モニタリング調査に関する福島県のお知らせはこちら>

様々な苦労を乗り越え、美味しいお米作りを続ける中で、福島のお米の美味しさをより広く知ってもらおうと開発されたのが「福笑い」。
お米の品種開発について、お話伺ってみると、やっぱり相当大変なものなのだそうです。

● 佐久間秀明さんのお話
  • 「福笑い」はどのように誕生したのでしょうか。

    「福笑い」の交配をしたのは平成18年で。米の品種開発って、目標を持って交配はするのですが、なかなかその目標通りのものが出るというのは少ないです。そこで、きっちり選抜をして、絞り込みをしていくわけですが、そこできっちり真摯に選抜を行ってきたということの集大成が「福笑い」であります。きっちり米の形質なり、あと栽培のしやすさも持つ品種なんですが、交配を重ねた中でそれを残してきたということは、当農業総合センターとしても誇れるところだと思います。
    「コシヒカリ」は福島県の主力なのですが、丈が長いので、成長した稲が倒れやすい。今年なんかも、ずいぶん倒れている田んぼが見られます。「福笑い」については、「コシヒカリ」よりも断然、稲が倒れにくいというのが特徴の一つです。最近は夏に猛暑日が続いていまして、なかなか米の品質を維持するのが難しい条件になっているんですが、綺麗な米の比率というのは、「コシヒカリ」よりも上回っているという特徴があります。まず、粒は大きくて、粒感は感じられる。粒感を感じながら、適度に柔らかい、食べやすい食感だと。さらに、香りがあって、味については「コシヒカリ」では味わえない食味ということで。ぜひ、一口ずつ、ゆっくりと味わっていただきたい。そういう米です。

  • 「福笑い」をこれからどんな品種にしていきたいですか。

    まぁ、「福笑い」はですね。全国のブランド米、各県でもプレミアムな米をPRしておりますが、「福笑い」についてもそれらの米に負けない食味食感になると考えておりますので。やっぱり、福島県というと、「『福笑い』っておいしいんだよね」と言っていただけるような品種に、皆さんが育てていっていただきたいなと思います。
    やっぱり、ご飯の美味しさというのを味わっていただきたい。「福笑い」を主役にした食べ方をしていただきたい、と思います。福島県は“いかにんじん”なんかが郷土料理で有名ですが、そういうご飯のお供というか、ご飯のお供って各地にありますので、「福笑い」の味を邪魔しないようなものをお供に味わっていただきたいなと思います。

長い年月をかけて作られた「福笑い」。
「福笑い」は、すでに公式ウェブサイトも立ち上がっています。
「福笑い」公式ウェブサイト

今季の2020年は、先行栽培として限られたごくわずかの農家さんによって栽培されています。
今回は、そんな選ばれた農家さんのお一人、福島県南相馬市で50年にわたり農業を営んでいる、寺澤白行(てらさわ しろゆき)さんにお話を伺いました。

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● 寺澤白行さんのお話
  • 先ほど田んぼの方を拝見してきまして、綺麗に稲穂が垂れていて、黄金色で美しいですね。

    そうですね、今年はですね。春先にちょっと冷害、7月には入梅の長雨。なんですけど、8月になると晴天が続いて、稲にはもちろん、農作物に対しては非常に良い日が続きました。多少高温障害はでておりますけれども、なんとか今年も作況指数がやや良ということで、今のところ安心しております。

  • 寺澤さんは、「福笑い」の生産というのは、いつからやっていらっしゃるんですか。

    私は、今年からです。今年、県の方で福島県内の生産農家13戸を選出しました。条件としてはGAPを取得した農家、そして「福笑い」の研究会に入会できる農家が対象で、いま栽培しているわけでございます。私はふくしま未来農業協同組合なんですけれども、管内で4箇所、中通りとここ浜通り。この相馬地方では、私だけ作付けしております。

  • 広さ的にいうと、どのくらいなんでしょうか。

    6,500平方メートル、65アール作付しているんですけれども、ソフトボールぐらいはできるくらいの面積になりますね。

  • 「福笑い」の手のかかり具合とか、生育具合って、どうでしたか。

    種まきから初体験したわけなんですけども、その他の品種と変わりなく、育苗もしやすかったし、田植えもスムーズに行われまして。生育の方は、「コシヒカリ」より若干丈が短く、穂も長くて、倒伏に強い品種だなというふうに思っております。で、JAの米検査は、オール1等で通っております。

  • 一等米というのは、「すごくおいしい」というイメージでいいですか。

    米質がですね。粒が揃って、整粒歩合が70%以上で、奇形米とか茶米みたいなのが混ざっていないという条件が、一等米です。

  • やっぱり、すべてを一等米として寺沢さんが手がけたというのは、ここまでの長い米農家としての歴史というか、生産者としての思いというか・・・

    やはり、手を抜かないということですよね。農家は、手をかける時に手をかけないと。やっぱり、「千日の行屁一つ」ってことわざがありますけれども、これはよく親から聞かされた言葉だったんですが。やはり、時期時期にちゃんとした管理、土手の草刈りとか水かけ、排水、そういったことを手を抜かないで頑張ることですよね。

  • ただ、本当に風評被害というのには苦しんできたかなと思う部分もあるんですが、その辺はいかがですか。

    そうですね。風評被害を払拭するために、南相馬市を始め、県もですね、震災後、「実証水田」を作付しながら放射線量を測って、内堀知事が先頭に立ち、「福島県内で生産をしているものは、これだけ安心なんですよ」というようなことで徹頭徹尾、風評被害払拭のために「安全第一」ということで頑張っております。私たちのところは、日本中どこを探しても、これ以上安全な米はないわけですから、一つ、安心して全国の消費者の皆さんに召し上がっていただきたいと思います。

先ほどご紹介した公式ウェブサイトには、「福笑い」の魅力がこんな風に紹介されています。

「香りが立ち、強い甘みを持ちながら、ふんわり柔らかく炊きあがる」という、これまでにない個性的な食感・食味が持ち味。
その魅力を最大に引き出すため、炊き方にもこだわってみると、なおのこと美味しいごはんと贅沢な時間を楽しめることでしょう。

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2021年秋の本格デビューに先駆けて、「福笑い」のおにぎりをいただきました。

● 寺澤白行さんのお話
  • うわあ、もうすごい大きいおにぎり!ちょっと両手で収まるかなくらいです。ツヤツヤですね、いただきます。まず、香りがすごく強いのと粘りが強いですし、一粒一粒ちょっと大きい感じもしますね。粒ぞろいですよね。噛んでたら甘いです。

    本当に「福笑い」です。食べて笑っていただけるお米じゃないかなと。

  • いま少し笑ってません?(笑)すごいおいしいですね!
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  • 寺澤さんは「福笑い」を召し上がられたことはありますか。

    去年食べさせてもらって、味は美味しかったです。「コシヒカリ」より粘りがちょっとあるのかなと。炊き方によっては歯ごたえもいいし、大変美味しい。よその県の銘柄米に負けないような米ではなかろうかなという風に思って食べました。今年、「福笑い」の名前をいただいた新米を食べるのを今から楽しみにしております。

  • 福島県産のお米として、トップブランドになっていくんじゃないかという期待がありますが、いかがですか。

    全くその通りで、期待しております。「福島県のお米は、『福笑い』ですよ」と言えるようなお米を作っていきたい・・・というふうに思っております。やっぱり、いま、福島県もそれぞれの風評被害で苦しんでおります。水稲に関しては、「福笑い」。「美味しいお米ができましたよ」というようなことで、これを食べていただいて、食べた人が笑顔になるようなお米になっていただければ、非常にありがたいなと思います。

「福笑い」のパッケージデザインを開発したのは、福島県の「赤べこ」をモチーフにしたキャラクター「ベコ太郎」でおなじみの寄藤文平さん。福島県クリエイティブ・ディレクターの箭内道彦さんの監修により、デザインが制作されました。

2021年秋の本格デビューに向け、2020年11月には先行しての限定販売が行われます。詳しくは、「福笑い」のウェブサイトをご覧ください。