Hand in Handレポート『清流の郷・川内村の水に魅せられて!』

全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。

「あれから10年、復興が進む福島を行く」と題して、来年3月に東日本大震災から10年目を迎える福島県の「今」をお伝えしています。

今回は福島県の東部に位置する川内村から、「『清流の郷・川内村の水に魅せられて!』レポート」をお届けします。

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川内村は、福島県双葉郡の中西部に位置し、東京からの直線距離は約240km。東は富岡町・楢葉町に接しており、北から南には雄大な阿武隈高地の山々が連なっています。村の平均標高は約456mと高く、霜などの影響を受けやすい土地です。葉タバコ、畜産・高原野菜などの複合経営型農業に適しています。

標高が高く、湿度が低いため、夏は昼夜で気温差が大きく、農産物は味がよいと評判です。平均気温が低いので、夏イチゴの栽培も可能。冬の寒さは厳しいですが、まとまった雪は年に数度しか降りません。

川内村では、各家庭は地下水を生活用水として使用しています。村のほとんどを占める山林が、きれいな地下水を育んでいます。また、村を流れる千翁川(せんのうがわ)は、上流に民家がないこともあって、とても清らかな水でイワナの生息地でもあります。

緑に囲まれ、さわやかな気候の川内村は、アウトドア、ドライブやツーリングにぴったりです。千翁川では、川沿いに整備された道路があり、イワナの渓流釣りも楽しめます。

今回は、そんな川内村の、自然を思いきり体感できる「いわなの郷」や、豊かな地下水を利用した“野菜栽培空間”「KiMiDoRi」を訪ねました。

川内村を流れる楢生川(ならぶがわ)のほとりにある「いわなの郷」は、川内村のレジャーの拠点となる複合交流施設。和風庭園や東屋、研修やバーベキューなどができる設備や、コテージなどの宿泊施設もあります。さらに、清流の魚であるイワナも養殖していて、釣り堀で誰でも手軽にイワナ釣りが楽しめる場所です。

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そんな「いわなの郷」の魅力、そして震災からこれまでの経緯を、支配人の渡邉秀朗(わたなべひでお)さんに伺いました。

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● 渡邉秀朗さんのお話
  • 「いわなの郷」はどのような施設ですか?

    釣り堀、レストラン、それから体験交流館という大きな施設があり、そば打ちやら味噌作りなども申し込んでいただければできます。あと、大きなホールがありまして、イベントや講演もできます。それと、コテージ、宿泊施設が山の裾野に5棟あります。それから、つい最近には、キャンプもできるような施設もオープンしました。遊具的なものは何もないんですが、自然があるので、それを楽しんでもらえればと思っています。夜は綺麗ですよ、星空が。

  • ここから見る星空は絶対綺麗ですね。

    そうです。それが売りになってますので。

  • 今お話を聞いているところも目の前に川が流れていて、すごく緑も綺麗で、お客さんもたくさんいて、笑い声もたくさん聞こえる場所だなと思うんですが、それこそ震災当時というのは大変だったんじゃないですか?

    やっぱり放射能ということがよくわからなくて、でも全村避難しなきゃいけないということで、ここも全部避難しました。富岡町という海辺の町があるんですけれども、そこの避難者の受け入れ先だったんです。(事故直後、)富岡町の人たちが来てここで待機していたんです。でも、いよいよ駄目だということで川内村も富岡町と一緒に、郡山の方に避難しました。
    それから散り散りバラバラになったのですが、1月には帰村宣言をして、戻れる人から戻ればいいということで、川内村はトップランナー的なことで帰村を徐々に始めたんです。「いわなの郷」には魚がいるもんですから、最初に避難した後、魚をどうしようかと考えていたのですが、役場の職員が「1週間に2回ほど川内村に戻ってきて見回りをする」と言っていたので、「いわなの郷」に行って餌をとにかくやりながら過ごしていました。5月になったら、掃除があるから戻れる人は来て手伝ってくれと言われて、私は家族を置いて戻りました。それから魚の面倒をずっと見ていて、再オープンまで2年3ヶ月かかりました。
    今でも、水産試験場の方へ1ヶ月に1回ずつ魚を送って、放射能が魚にあるかないかを調べてもらっています。施設の中にいる魚は、「放射線は検出されず」がずっと9年以上も続いています。
    じいちゃんたちが孫を連れてくると、「俺は食ってもいいんだけど、孫に食わして大丈夫か?」と聞かれますが、「絶対大丈夫ですよ」と言います。やっぱり安心して食べるのと不安がって食べるのでは美味しさが全然違うんですよね。そんなんでちょっと苦労しましたけど、今はもうみんな、こう焼きたてを頬張りながら「うまいね」って言ってくれます。炭火で焼くものですから美味しさが倍増するんですよ。遠赤外線で中からジュワッと焼けるので、是非皆さんに炭火で焼いた魚を食べて欲しいんです。焼きたては絶品です。

  • 夜は星がきれいですよ~ともおっしゃっていましたが、これから秋の景色も楽しみですし、そして冬にも貴重な体験が楽しめるプランがあるということですが。

    真冬のことなんですけど、1月に極寒キャンプというのをやります。川内村は雪は降らないんですが寒さは県内の中でも1~2番を争うくらいの寒さのところなんです。マイナス10度くらいは平均になりますので、その中でテントの中で一夜を過ごしてもらいます。

  • 冬はとても寒いと聞いていますが大丈夫なんですか?

    朝は「おはよう」ではなく、「生きてますか」だそうです(笑)。耐えられない人は体験交流館に部屋がありますのでそこに戻ってもらうという形になっています。それでも極寒のキャンプを楽しみたい方がたくさんいらっしゃるということです。

川内村は、地盤が安定しており、東日本大震災そのものによる被害は少なかったのですが、東京電力福島第一原子力発電所から20~30km圏内にあり、2011年3月16日に全村避難となりました。

しかし、事故当日の風向きの関係か、放射能物質の飛散が比較的少なく、村の放射線量も全体的に低いことが、後日、明らかとなりました。放射線量が全体的に低いこと、原発が再び爆発する可能性が低くなったことで、帰村を決め、2012年1月には他の自治体に先駆け、いち早く帰村宣言を出し、2016年には全域の避難指示が解除となっています。

次に訪れたのは、豊かな地下水を利用した”密閉型植物工場”「KiMiDoRi」。川内村は村のほとんどを占める森が清らかな水を育み、川が水を運ぶ“清流の村”。そして、標高が高く湿度が低いため、昼夜の気温差が大きく、高原野菜や畜産に適している地でもあります。その農業も、震災と原発事故の影響を受けましたが、帰村宣言後の2013年に設立されたのが、この「KiMiDoRi」です。

技術開発部長で農学博士の兼子まやさんに、お話を伺いました。

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● 兼子まやさんのお話
  • ここはどのような施設ですか。

    ここは原発から20 kmから30 km圏内に入っているところなんですけれども、原発事故の直後、川内村で農業がそのままできるかどうかというのが全然わからなくて、風評被害もあったと思います。そこで、川内村の農業の復興と雇用の促進のために、川内村が企画した植物工場であれば、そういった放射性物質の影響だったりとか風評を低減できるんじゃないか、防げるんじゃないかということで建てられたのがこちらの工場です。

  • 兼子さんは千葉から移住してこられたんですか?

    そうですね。こちらの工場が建つのと同時に、私もこちらの会社に就職したので、こっちに移住してきました。

  • 「KiMiDoRi」を選んだ理由は?

    あまり私の場合選ぶ感じじゃなかったんですけれども、大学の知り合いの先生がこちらに携わっている人と知り合いで、川内村で植物工場あるけど行きますかと聞かれて、じゃあ行きますというような感じで決まった感じなので、縁があってきました。

  • 我々も今日、川内村を周らせていただいて、自然が豊かで、水が豊かで、気持ちいいなという感じだったんですが、実際にこちらにいらっしゃってどんな印象をお持ちになりましたか?

    一番驚いたのが川内村は上水が通ってなくて、各家庭が井戸水で暮らしているというのを聞いて、すごく驚いて、それだけ水がきれいで、うちの工場も水をたくさん使うんですけれどもきれいな水が潤沢にあって、自然が豊かで非常に良いところだと思います。

  • そんな中で人工の光を利用した水耕栽培ということで、ズバリ利点というものはどういうものがあるんでしょうか?

    外気を取り入れる制限ができますので、放射性物質や外のチリとか埃とかというのをシャットアウトできますし、作業員も作業服を着て、マスク手袋をして、全員作業にあたりますので、ノロウイルスとか、そういうのもコントロールができますので、洗わずに食べることもできるというのが、消費者側にとっては利点なのかなと思います。
    また、天候に左右されないというのは、仲卸さんとか流通業者さんにとってメリットとかなと。今は落ち着いてきましたが、レタスが高くなっちゃってましたけれども、そういう時でも、うちは変わらない値段で出しています。安い時の露地物のレタスと比べれば割高なんですけれども、野菜が高くなってくるとうちの野菜は割安ですし、そこで一度買っていただくと、今度洗わなくていい、洗うにしてもサッとですみますし、非常に手間がかからなくて便利だなということで、徐々にお客さんが増えてきているような感じですね。

    縁があって千葉から移住して川内村に住み、“密閉型植物工場”「KiMiDoRi」で野菜作りを担っている兼子さん。風評被害と直面した川内村の農業の復興と、雇用の促進を目的に立ち上げられた「KiMiDoRi」では、現在14名の方が、リーフレタスといった葉物野菜の栽培を行い、バジルペーストやゆずドレッシングといった加工商品も販売しています。こうした作物や商品への安心安全面への自信についても、兼子さんに伺いました。

● 兼子まやさんのお話
  • 震災当時は、福島のものは本当に放射性物質に対しての安全面で力を入れてきたと思うんですが、もちろん「KiMiDoRi」のお野菜からそういったものが出る心配はないということなんですよね?

    一年目は、私どもの方でも機械を準備しましてモニタリングしていましたけれども、もちろん出ませんでした。川内村全体で、井戸水とか飲料水のモニタリングはやっていて、事故直後からずっと検出されていませんし、実際にうちの方でも一年間ぐらいモニタリングして問題ないということを確認していますので、放射性物質については問題ないと確認していますね。
    作物の方も、そもそも農業が外でできなくなるんじゃないかというのも考えた上で、この室内だったんですけれども、今はもう皆さん笑い話になっています。今年もガンガン外で野菜を作って、川内村でもモニタリング調査やっていますけれども、畑で作ったものに関しては特に問題なく食べれますし食べてますね。最近よくパートの方から、ご自宅で作られているトマトをもらったりとかして。

  • 美味しいですか?

    美味しいですね。人によっては本当にプロ並みの。ただ売れないんですよね、川内村みんな作っているから(笑)

風評被害を含め、原発事故の影響で、村の農業が衰退するかもしれない、そんな危機感もあって生まれた“密閉型植物工場”「KiMiDoRi」ですが、“今はもう笑い話になるくらい皆さんガンガン外で野菜を作ってます”というお話でした。こうした川内村の実情を、地域の魅力を含めて発信していくことも、「KiMiDoRi」が担う役割なのかもしれません。

今回は清流がきれいな川内村を訪れましたが、川内村には、今日ご紹介した施設の他にも、「蛙の詩人」として有名な草野心平(くさのしんぺい)ゆかりの天山文庫(てんざんぶんこ)や、モリアオガエルという蛙の繁殖地として国の天然記念物にも指定されている平伏沼(へぶすぬま)などもありますので、是非チェックしてみてくださいね。

また、福島県ではホームページで県内の水の放射性物質検査の情報を公開しているほか、FacebookやインスタグラムなどのSNSを使って水の安全性を伝えています。
復興庁や福島県では、食品の放射性物質検査の結果も掲載しています。