Hand in Handレポート「福島の今を世界へ発信する~『Fukushima Ambassadors Program』」

Hand in Handレポート「福島の今を世界へ発信する~『Fukushima Ambassadors Program』」

全国各地の災害被災地の現状と、復興へ力を尽くす人たちの姿を通じて、防災減災の教訓を伝えていく、さらにその地域の魅力を伝え、復興の応援につなげていく復興応援プログラム「Hand in Hand」。

今回は、福島大学が海外から短期留学生を招いて、自校の学生とともに福島県各地に行き、地域の方との交流などを通じて、震災後の福島の今とその魅力を伝えることを目的とした、フィールドワークプログラム「Fukushima Ambassadors Program」についてお届けしています。

プログラムを中心的に担っているのは、福島大学経済経営学類助教で、国際交流センター副センター長、そして「福島県あったかふくしま観光交流大使」でもある、マクマイケル ウィリアムさん。30代のカナダ人です。福島県と関わることになったきっかけを伺いました。

マクマイケル ウィリアムさん
● マクマイケルさんのお話
  • 福島県に派遣されるって2007年に通知がきて、来てみてもう一瞬でファンになりましたね。食べ物もおいしいですし、日本の原風景がここに揃っていると思いますし、文化も豊かですし、なによりも「人」ですよね。常に自分よりも他人のことを先に考えられるような優しい人たちがたくさんいるので、私みたいな外から来た外国人に対してもすごく皆さん優しく接してくれて。
  • 震災後は海外へ向けて福島の誤解を解きたいというか、福島の本当の姿を知って欲しいって、それがしたい、そうすることで今まで優しくしてくれた人たちへの恩返しができるかなって思うようになったので、そこの強い思いっていうのもありますし、最初の時の原体験があるので、それらに勇気づけられてやって来れた感じですかね。

今年、英国の一般紙であるガーディアン紙が選ぶ、「2020年に行くべき20の場所」に、日本から唯一選出された福島県。「復興五輪」として開催される東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレーが3月26日に福島県広野町・楢葉町のJヴィレッジからスタートするほか、農産物などの食文化、豊かな自然や観光の魅力が評価されての選出でした。
そんな福島県で、福島大学の学生と海外からの短期留学生たちが、福島県内各地に行き、地域の方との交流などを通じて、震災後の福島の今とその魅力を伝えることを目的としたフィールドワークプログラムが「Fukushima Ambassadors Program」です。

● マクマイケルさんのお話
  • Fukushima Ambassadors Programとは?
    • Fukushima Ambassadors Programは、福島大学が2012年の5月から行っている短期留学プログラムです。福島大学は世界に52の協定大学があるんですが、協定大学で勉強している学生で、福島に関心がある学生を福島に呼びまして、2週間ぐらいかけて福島大学の学生や、福島大学に留学している学生と一緒に、震災後の福島の課題などについて学ぶプログラムです。
    • 実際に震災の被害、津波の被害に遭った地域とかも前半の方で訪れたり、後半は原発の災害について学ぶということで、福島第一原子力発電所を視察したり、帰還して町を活性化しようとしている人たちの話を聞いたり、実際にボランティアをしてみたり、そういうプログラムですね。
  • プログラムが始まったのが震災の翌年2012年で、その頃は日本の国内でも福島に対して誤解を持っている方もいらっしゃったと思います。海外からの留学生はどういう気持ちで福島を知りたいと思って来ていたのでしょうか?
    • そもそもこのプログラムを始めるきっかけは、かなり福島が誤解されていて、危険な場所って思われていたので、それを私は・・・自他共に認める福島県大好きなカナダ人なので・・・なんとかその印象を少しでも変えて、私のように福島のファンになって帰ってもらいたい、さらに福島のことをしっかり学んでそれを海外に発信してもらえたらなっていう思いで始めたんです。
    • (最初は)誰も応募してこないのではないかなって、正直思いました。けれども予想に反して、当時は10名だけの募集だったんですけど、そこに100名以上の応募がありました。なので私も一からいろいろと回って、「こういうプログラムなんですけど協力してください!」っていうことでいろんな人に問い合わせをしたり、ホームステイの家庭を探したり。
    • そんな中で印象的なエピソードがありました。いろんな家庭から応募があったんですけれども、半分くらいが仮設住宅からの応募だったんですね。ぜひ仮設に来てもらいたいと。もうそれがすごく私も意外だったんですけど、正直「ご自身の生活も大変なのにどうしてですか?」って聞いたら、いや家にも子供がいて、子供達が学校でこういうチラシをもらってきて・・・チラシを学校で撒いてたんですけどね・・・で、「家にも呼べないか?」って言ってきて。「無理だよ。仮設だから」って言ったら「何で仮設じゃだめなの?」って泣かれてしまって。親もハッて気づいて、「そっか、なんで仮設だからダメなんだろう。それだけでこの子達の機会をなくすのはいけない」と思って、それで、応募したら、話を聞いた他の所もたくさん応募してくれていたっていう・・・そういうことがあったらしいんですけど。
イメージ画像 イメージ画像
過去に開催されたFukushima Ambassadors Programの模様

震災と原発事故があったその翌年の2012年にこれほどの参加応募があったこと、そして仮設住宅にホームステイの学生を招こうと手を挙げた人がたくさんいたことに驚きつつ、マクマイケルさんは勇気づけられたと言います。そしてその時から変わらない、プログラムを通じて伝えたいマクマイケルさんの思いとは。

● マクマイケルさんのお話
  • やはり一番は核心を突く内容にしているというか、やっぱり海外の人がいちばん誤解しているところというのは、まあ私も海外のニュースとかいつも読んでるので、ここだいぶ誇張されて報道されてるなとか、そういうポイントっていうのが分かっているところがあって、たとえばわかりやすい例でいうと、汚染水ですよね。
  • いまだに普通にニュースで、原子力発電所から300トンもの汚染水が海に毎日流れている、とかですね、まるでもう世界中の海が福島のせいで汚染されているっていう印象を持っている方が多いですし、さらにそう思っていなくても、そういうニュースばかり見てきているので、知らない間にそう思い込んじゃっている学生も多いです。
  • それをしっかりと理解するために実際に浜通りの方に行って、漁業の正確なデータを理解した上で、原子力発電所も見ることで、汚染水がどういう場所でどういう風に処理されていて、どういう風に保管されているか。それに対する漁業者の想いとか、あとホームステイを浜通りでして、いつも相馬市と南相馬市の方で行っているんですけども、そこに住んでる人、漁業とかを生業にしている人たちと一緒に生活を共にして、そこから学ぶというそういう工夫もしています。
  • 最近の傾向でいうと、向こう(海外からの見方)が勘違いしている事項も伝えながら、同時に社会学の研究をしている学生たちには、今のまちづくりの現場を見てもらって、世界でも進んでいる取り組みをしている地域が福島にもあるとかですね、自分が今まで学校で勉強してきたことが実は福島にも当てはまることで普遍的なことなんだっていうことに気づいてもらいます。そして、学校に戻ってから自分の卒論のテーマを福島に関連するものにしてくれたり、大学院に進むけど福島をテーマにやりたい、博士論文を福島にしたいっていう相談を(昨年だけでも)4名の学生から受けたりとかですね。一回だけじゃなくて自分のキャリアをずっと福島と関わっていきたいっていう学生達も増えていてですね、そういう工夫もプログラムの中でしていますね。
● マクマイケルさんのお話
  • プログラムをはじめた当時は、そんな風に福島のことを考えてくれる海外の学生がこんなに増えることは想像していましたか?
    • いやまったくそれは。去年第14回目を開催して、これまで9カ国17大学、205名が参加しているんです。福島のファンづくりっていうのはずっと変わらないですし、誤解を解きたいってところもあるんですけど。でも、今は誤解を解きたいというよりも、もっともっと福島の可能性を感じて、福島を自分事として今後もずっと関わってくれる人材を育成したいっていう風に思っていますね。
    • あと、すごく嬉しいことがもうひとつありまして、やっぱり、どんどん風評そのものも少なくなってきているのかなって。特にインターネットとかによって少なくなってきているのかなと思っています。というのも先日ですね、ちょっと話題になったんですけど、外国人コミュニティの間だけかもしれませんけど、Facebook や Twitter や Instagramで、とある新聞社が出したアンケートがちょっと話題になったんですね。そのアンケートが何かというと、「オリンピックで福島の食材を提供すべきかどうか」ということを聞いていたんですけども、“あーまったくこんな悪質なものが出て”って正直思って、たぶんまたマイナスな回答が出るんじゃないのかなと思いました。でも、圧倒的に「その質問をすること自体がバカバカしい」という回答ばっかりで、皆さん当たり前じゃないかと。「福島は安全なんだけど何でこんな質問するの?これはただの煽りの質問だ」ってその批判の方が圧倒的に多くて、なんか徐々に徐々にやっぱり伝わってきてるのかなと思って。
    • そこに率先してコメントを書いてるのが、やっぱり過去にプログラムに参加してくれた学生だったりもして、すごく嬉しかったですね。やっぱりそういうふうにいっぱいみんな味方して、今も福島のことをちょっとでも悪く言われると自分のこととして思って戦ってくれたりもしてますし、オンラインで、すごく嬉しいですね。ちゃんと福島ファンが増えているというか実感がわきましたね。

そんなマクマイケルさんはどうしてここまで福島を大切にするようになったのでしょうか。
カナダ人の父と、日本人の母を持つマクマイケルさん。実は5歳から8歳の3年間は、日本の徳島県で過ごしていました。その後、カナダへ戻ったものの、外務省などが実施している、海外の方に日本にきてもらい、各地の学校などで、国際交流や英語の授業にかかわってもらう「JETプログラム」で再び来日。ただどこに派遣されるかはわからず、たまたま派遣されたのが福島県だったそうです。最初は福島がどこかも分からない、1年くらい働いてカナダに帰ればいいかという程度だったと言います。ところが福島の自然、食文化、優しい人も含めて、福島が大好きになってしまった。任期終了の2010年に、福島大学に入って現在に至ります。そして震災。大好きな町が傷つく光景に、今こそ自分の力で福島に恩返しをすると決意したそうです。

徳島県に住んでいた幼少期に読んだ伝記マンガで、「武士道」を英語で執筆して、海外に日本人の考え方を紹介した人物である「新渡戸稲造」に憧れたというマクマイケルさん。稲造の「願わくは、われ太平洋の橋とならん」という言葉に自分を重ねて、いま福島と世界を結ぶ架け橋の育成者として、全力を傾けているのだといいます。

Fukushima Ambassadors Programに参加した学生たちにもお話を伺いました。

イメージ画像
(右から)パーソナリティ高橋万里恵さん、マクマイケル・ウィリアムさん、佐藤さん、渡辺さん、メーサーロシュ・フルジナさん
● 佐藤さん(仙台出身 経済経営学類3年)のお話
  • 参加する前は非常に知識自体が不足していた部分もあるんですけれども、やはり参加することによって、現在、放射線の被害が思った以上に少ないということと、食品は全部検査しているので、逆に世界一安全な食べ物なんじゃないかなという考えに変わることもできたし、海外からも思った以上に皆さん熱いパッションを持った方が来ているので、今後もまた関わる機会があれば何かしたいなという気持ちを持ってます。
● 渡辺さん(新潟出身 経済経営学類4年)のお話
  • 当時、浪江であるとか浜通りの方が実際どうなってるのか、そういう最新の情報って正直自分でもよくわかっていなかったし、それをちゃんと正確に知る、そして発信していくって事が当時の自分には足りなかったので、それを埋める存在としてアンバサダーズプログラムはすごく私の役に立ってくれたなと思っています。
● メーサーロシュ・フルジナさん(ハンガリー出身 留学生)のお話
  • 東日本大震災の時は、まだ高校生でした。で、原発事故があっても、それを見て放射線がどういうことなのかあまりわからなかったし、大学に入って、留学が福島の大学に行くことに決まった時、両親が「行かないで」と言われて、何でそう思っているかなと思いました。福島に来てF.A.Pに参加して、いろいろ学んで、自分でハンガリーに帰って、自分の母校の高校に戻って学生たちに、原発事故だけじゃなくて、津波とか地震とか何が起こったのかについて話ができて、良かったと思っています。

マクマイケルさんは「何を話すかよりも誰が話すかというのがすごく重要」と言います。熱い思いを持って、福島の現状を正しく発信する、そして発信する人材を育てる、福島大学、マクマイケル ウィリアムさんが手掛ける、Fukushima Ambassadors Program。例年は夏の開催ですが、今年は東京オリンピックとの兼ね合いで、初めて秋の開催を目指しているということです。

マクマイケルさんのお話で、福島は危険な場所だと誤解されていたという話がありましたが、原発事故による放射線の値は、福島市内で事故直後の値の5%未満にまで減っており、今は日本や世界の主要都市とあまり変わらないくらいになりました。福島県を訪れ宿泊した外国人の数も震災前以上になっています。ぜひ多くの学生さんにプログラムに参加していただきたいですね!

復興庁でも、福島の現状を広く世界に知ってもらうため、海外向けのTV番組を3月27日(金)に放送する予定です。